「読まれる新聞」三つの条件とは
読者に読まれ親しまれる新聞とは…
- 読者の要求・関心にこたえ、その半歩前をいく企画とWHY(なぜ)・HOW(どのように)を重視した突っ込んだ取材。
- CLEAR(明瞭に)・CORRECT(正確に)・CONCISE(簡潔に)の「良い記事の条件・三つのC」を満たした読みやすい記事。
- いまの時代にふさわしく、読者の感覚に見合った読みやすく美しいレイアウト。
……以上の三つの条件を満たしたものといえます。
やっぱり “押えて流す” が新聞の基本
「押えて流す手法なんて、もう過去のものだ。時代は大きく変わっているんだ」という声が聞こえてきます。そして「内容が形を決めるんだ」「内容がないからレイアウトでゴマかそうとしてるんだ」として、レイアウトが軽視される傾向や「泥くささ」と「読みにくさ」が混同される傾向もありました。
たしかに、「内容が形を決める」ものですが、いまの時代の読者の感覚にマッチしたレイアウト、読みやすさを第一に追求したレイアウトをもっと重視する必要があります。そのためにも、日本の新聞編集の長い歴史のなかで生みだされ、定着している新聞の紙面レイアウトの技法を学んだうえで、これを出発点にして「新しい型の新聞」を生みだしていこうという声が、再び大きくなってきています。
紙面レイアウトの《定石》とは
最近、横書の文章がひろく普及してきていますが、新聞はまだまだ縦書が主流です。縦書の日本語の文章は、上から下へ、右から左へと行をかえて読んでいく「きまり」になっています。読者の視線も習慣的に、このように流れるため、紙面の上では「右から左さがりの対角線」上が一番めだち、この対角線外=つまり、紙面の左上と右下は《死角》といってめだちにくい場所です。
日本の新聞編集の長い歴史のなかで生みだされ、定着している紙面レイアウトの〈定石〉とは、この「死角」に《カコミ》《タタミ》などの「ハコもの」、写真・イラストを配置して、「死角」を生かし、右上から左下の対角線上に見出しが配置できるよう考えながら記事を流していき、最も重要な記事、読ませたい記事を、そのつぎに配置して左下でまとめる…という流し方です。
読者は、必ずしもトップ記事から順に読んでくれるとは限りません。どの記事から読みはじめても、その記事の流れは自然で、読者を迷わすことなく導いていかなければなりません。「ハコもの」や写真、毎号連載しているものを、それぞれの位置と形・大きさをきめて固定した間を、右から左へ、上から下へと、見出しを配置しながら、水が流れるように記事を流していきます。これを「押えて流す手法」といい、これが紙面の〈定石〉=基本となっています。
紙面の割付作業をすすめる順序
実際に割付(レイアウト)をする順序は、集められたそれぞれの素材(記事や写真、イラストなど)をしっかりと頭のなかにたたきこむことです。数多くある素材のなかから、どの記事と写真をどの面に入れるか、「面割」をします。
つぎに、どの記事を一番強調するかなどの記事の価値を評価しながら、紙面の構図をスケッチしましょう。そこでは思いきって「形」を優先させてみることです。
毎号連載しているものは、できるだけ同じ面の同じ位置に、同じような形で、最初にきめてしまいます。
構図ができたら、いよいよ計算です。連載ものや《カコミ・タタミ》の大きさを正確に計算し、位置と大きさを書き入れてから、流し記事を流していきます。
見出しは天地何段でどの位置に入るのかがきまったあとで、それにあわせて見出しの文章や形を考えます。つまり、見出しの文章や形は一番最後に…。見出しの字数も多くならないよう配慮しましょう。
見出しや写真、イラストなどのスペースを充分に、記事の本文をバッサリと削る心づもりでおこなうことです。そして、右上から順番にきめていくようなことはしないように…。「死角」にあたる部分を先にきめてしまうこと、「押える」ことが先なのです。
上の実例をみてください。このような紙面の場合は、実例の中に示した番号の順、つまり、「ハコもの」を先に固定させ、その間に流し記事を流していきます。
大切にしよう! 紙面のバランス
紙面構成にも美しさという要素のなかにある均衡感覚・つりあいという視覚的なものを無視することはできません。
見出しが紙面の右側ばかりにかたよったり、大きな写真が下段の方にだけあると、この視覚的バランスがくずれ、不安定な感じをあたえます。見出しは左右にだいたい平均して配置し、大きな見出しはできるだけ上の方において、紙面のポイントを中央からやや上の方におくように心がけましょう。
また、《カコミ》や《タタミ》の左右が大きくて流し記事が、これらに邪魔されて窮屈なものになったら紙面が死んでしまいます。《カコミ》や《タタミ》の左右の大きさは、紙面の三分の一以上にならないようにし、縦長か横長の形にすると安定します。
また、二~三面、四~五面のように、新聞を広げたときの左右の紙面が、全体としてバランスがとれていないと、チグハグな感じを与えますから、左右の紙面のつりあいを考えながらレイアウトしましょう。各面のレイアウトを、それぞれ手わけしておこなう編集部では、とくにこの点での調整が必要です。
“逃げ道” の確保が必要に…ブロック組みの紙面
いままで述べてきたのは「押えて流す」手法で、紙面構成の基本として一般化しているものですが、週刊や旬刊で、タブロイド判の新聞では、《カコミ・タタミ》などのいわゆる「ハコもの」をふんだんに利用した紙面=「ブロック組み」によって美しく読みやすい紙面をつくりだしていくことも大切です。
しかし、こうした紙面をつくるときには、なによりも組版のいろいろな約束ごとに慣れるとともに、カコミ手法に慣れることです。
また、字詰や行数の計算、飾りケイの天地・左右の空白の計算などを正確にし、正確でわかりやすい指定が要求されます。
大きなブロックで大胆に
ブロック組みのレイアウトには定型というものはありません。読みやすさと紙面全体のバランスに注意していくことが大切で、あまり小さなブロックにすると逆に読みにくくなりますから、写真を大胆につかい大柄なブロックにしたほうがすっきりとします。
企画もの、特集ものなどに効果を発揮します。
また、使用する飾りケイの種類にも充分注意し、できるだけ統一するか、同じ傾向の飾りケイにしましょう。
割付作業の順序は、上の実例の場合では、《1》の記事の幅を最初に計算して割り付けし、つぎに《2》の記事の幅を計算して割り付けます。《1》は6~7段目の図版を組み上がったあとで変えないため最初に固定しています。《2》は見出しの天地が組み込みになっていますから、これも組み上がったあとで変えないようにしています。そして《A》《B》《C》の記事を流し組みの要領で割り付け、行数計算の狂いを簡単に調節できるようにしています。
行数計算を正確にすること
こうした紙面をつくる場合に気をつけたいことは……
- ケイのスペースを必ず計算に入れることです。左上の実例では、最上段の記事《A》の下に飾りケイが入っているため、この記事の字詰は基本字詰より一字へらしてあります。また、最下段の記事《C》も一字へらしています。
- 一つひとつのかたまりについて、見出しのスペースも含めて、左右の行数計算を正確にすること、そしてタテに入れるケイのスペースも充分にとることです。
- 正確な行数計算と一つひとつのかたまりの正確な形の指定をしたうえで、紙面の左右どちらかに必ず「逃げ道」をつくることです。万一、計算した寸法よりも幅が一~二行大きくなっても、あるいは小さくなっても、どこかで調整できる場所をつくっておくことです。
知っておきたい紙面構成のタブー
両流れ
左上の実例をみてください。Aの記事はイラストの右側を流れて、1~2~3~4へと流れています。Bの記事はイラストの左側を流れて、5~6~7~8へと流れています。つまりAとBの記事はイラストの両側を流れ、Cのケイで合流しています。こうした場合を〈両流れ〉と言われ禁じられています。
とくに、A記事の1とB記事の5のところの最後が、文章の区切りで(。)でおわっている場合は、読者は2へとつづくのか、6へつづくのかわからなくなります。3のところも同じことです。また、Aの記事の2から、6へとイラストをとびこえて読んでしまうことにもなります。このように、読者を混乱させることはさけなければなりません。
左下の実例は、これを修正したものです。ただし、記事Bのイとロがあとで述べる「泣き別れ」にならないよう気をつけましょう。
泣き別れ
最初の実例のA記事の1は(。)で終っています。Bの記事の5の行の最後が(。)で終わっており、2の最初が行かえではじまっている場合は、2を読み落とす場合があります。
また、6がA記事のつづきだと思う読者もいます。これを〈泣き別れ〉といって、さけたいことのひとつです。この〈泣き別れ〉をなくすには、校正作業のときに上段の最後の行から下段へ文章をおくってつづけるか、上段の最後の行を一部削除して下段をおくりこみます。
ただし《カコミ》《タタミ》の場合などのように、一つのマスのなかに入っている場合は、読み落すことがありませんから、さしつかえありません。しかし、上の実例のように〈両流れ〉と〈泣き別れ〉が重なったら大変です。
飛びおり
流し組みの場合、記事は下段の右下あるいは真下へ流れるものですが、次頁の左上の実例のように、A記事が1から2へ飛びおりる形は禁じられています。
とくに、1と2との間が〈泣き別れ〉になっていたら、2の記事は孤立して読まれなくなってしまいます。このように二段も〈飛びおり〉たら、まったく記事がつながりません。これらは絶対にさけたいものです。
飛びこし
記事の〈流れの原則〉からいえば記事はぶつかったら下段へと流れるもので、何かを飛びこえて流れるものではありません。例外を除いては、飛びこしをやってはならないということです。
例外とは①カコミ・タタミで見出しが真中にあるとき②さし絵をつかうとき③記事の中に広告やカットを入れたとき…などです。
左下の実例をを見てください。記事Aの二段目は、中央のカコミ記事を飛びこえて左側に流れています。しかも、二段目の飛びこえる個所と三段目右側の記事の最初が〈泣き別れ〉になっています。Aの記事を読んでいる読者の眼は二段目の右側の記事を読み、カコミ記事にぶつかったら三段目の右側の記事に流れていくのが自然で、流れの原則からいうと、このように流れるのです。すると二段目左側の記事は読者の眼にはふれずに、どこかへ消えてしまいます。
ハラキリ
左上の実例のように、五段目と六段目の間、七段目と八段目の間が、紙面を横断する場合を〈ハラキリ〉とよんで、これも紙面構成上〈タブー〉とされています。しかし、タブロイド判などでは、これをあまり考える必要はありません。
これは、紙面がそこから分断された感じを与え紙面の統一感を失い、さらに、あとで述べる「見出しの直列や並列」がおこりやすいことと、両流れがおこりやすいこと、そしてなによりも、一方の端へ記事が流れていると、目の動きからも無理があり、読者に読みにくい感じを与えるためにきらわれているものです。できるだけさけるようにしたいものですが、ただ〈ハラキリ〉を必要以上に恐れすぎて、かえって無理な形になるようでは、もっと読みにくい紙面になってしまいます。
流し記事だったら「押え」るものをもってきて、二十行以内で下段へおろして流すようにすれば、〈ハラキリ〉をふせぎ、記事を短く感じさせてくれ、紙面レイアウト上も美しくなります。また、下から二段目や一段目が、ハラキリになるのはさしつかえありません。
見出しの直列・並列
左上の実例のCとDのような場合を、見出しの直列といいます。見出しCとDは合計五段の見出しという感じになっています。
見出しCとDの場合は、まだ上と下の段数が違っているのですくわれますが、これらは形の上からいっても、たいへん見苦しく、紙面をタテに分断してしまいますから、さけるようにしたいものです。
見出しBとCのように、同じ位置の段に同じ二段の見出しがならんでいるものを〈見出しの並列〉といってきらわれています。
特集記事などで、並列させることに意味があれば別ですが、そうでない場合は、見出しの役割を相殺することになりますから、さけてください。見出しAとBの場合は並列ではありません。
こうした見出しの直列や並列を〈タブー〉としているのは、見出しのもつ意味を殺してしまうことが、その理由です。
とくに直列は紙面の右側だけにかたよったり、中央だけにかたよるなど紙面のバランスをくずしたり、並列や〈ハラキリ〉の原因になったりします。一段見出しの並列はかまいません。
シリモチ
左下の実例のように、紙面の最下段に、二段以上の見出しや写真などを配置することを〈シリモチ〉といいます。
これは、紙面のバランスをくずすためにきらわれているものですが、「ぜったいにしてはならない」というものでもありません。なるべくさけるようにし、やむを得ないときは上段の方の比重を重くするようにしたり、横見出しにするなどの工夫が必要です。